第45章 誕生日
まだ少し眠そうに髪を整えながら、窓の外へ目を向ける。
「もうごはんの準備するの?」
「ああ」
「誕生日会するの、夕方じゃなかった?」
「午前中から仕込むもんもあるからな」
「さすが……」
納得したように頷く。
そして、ふわりと笑った。
「ありがとう、爆豪くん」
「……別に普通だろ」
そっけなく返しながらも、爆豪の視線はユカリから離れない。
誕生日の朝。
いつもより少しだけ特別な日。
だからなのか。
それとも、ただ自分がそうしたいだけなのか。
爆豪は少し考えるように黙ったあと、ぽつりと口を開いた。
「……なんかしてほしいこと、ねェのかよ」
「え?」
「誕生日だろ」
ユカリが目を瞬かせる。
それから、くすっと笑った。
「なんかすごい甘やかしてくれるね?」
「うるせェ」
「ふふっ」
嬉しそうに笑う。
その顔を見ていると、やっぱり聞いてよかったと思う。
ユカリは少しだけ考えるように視線を落とした。
そして――顔を上げる。
「………じゃあ」
「ん」
「キスしたいな」
一瞬。
爆豪の目が止まった。
けれど、何かを言い返すこともなく、すぐに片腕を伸ばす。
「………こっち来い」
「え?」
ぐいっ。
腕を引かれた。
「わっ……」
バランスを崩したユカリの身体が、そのまま爆豪のほうへ引き寄せられる。
気づけば、ユカリはベッドの縁に座る爆豪の膝の上に、向かい合う形で座らされていた。
「……爆豪くん」
「なんだ」
「……近い」
「お前が言ったんだろ」
「そうだけど……」
顔が近い。
触れそうな距離にある爆豪の瞳を見つめながら、ユカリの頬がまた赤くなる。
爆豪はそんな彼女を見て、ほんの少しだけ目を細めた。
「……欲しいんだろ」
「……うん」
小さく頷く。
その返事を聞くと、爆豪はユカリの頬へ手を添えた。
朝の静かな部屋に、二人の呼吸だけが重なる。
「……ん……」
最初は触れ合うだけの優しいキス。
けれどユカリが吐息を漏らした途端、爆豪は逃がす気がないと言わんばかりに何度も深く唇を重ねてきた。