第45章 誕生日
うまくいかずに落ち込んでいたとき。
自信をなくしていたとき。
あと一歩が踏み出せなかったとき。
ユカリは、いつもこちらの目を見て話してくれた。
大丈夫だと背中を押してくれた。
時には一緒に悩んで、時には優しく笑って。
その言葉に救われたのは、自分だけじゃない。
「だから……物じゃなくて、言葉を贈るのはどうかなって」
出久は教室にいる一人一人を見渡した。
「一人ずつ、ユカリ先輩への『ありがとう』を書くんだ」
「…………」
「色紙なら形にも残るし……僕たちがどれだけ先輩に感謝してるかも、ちゃんと伝えられると思う」
数秒の沈黙。
そして――
「よっしゃ、のったぜ!緑谷!」
真っ先に声を上げたのは切島だった。
「めちゃくちゃいい!」
「俺も賛成!」
上鳴も勢いよく手を挙げる。
「それなら先輩も気ぃ遣わなくて済むだろ!」
「うんうん!絶対喜ぶよ!」
芦戸も嬉しそうに笑った。
「じゃあ、色紙買ってこないとね!」
「デザインはどうしましょう?」
八百万もすぐに話へ加わる。
すると――
「はい!はい!オイラ真ん中な!!」
峰田が突然、堂々と手を挙げた。
「一番目に付くとこだから!」
「なんでだよ!」
瀬呂が即座に突っ込む。
「そこは普通、ユカリ先輩の名前だろ!」
「じゃあ俺の名前を一番デカく――」
「却下」
爆豪が即答した。
「なんで!?」
「テメェの名前なんざ端っこで十分だ」
「ひでぇ!」
再び教室が笑いに包まれる。
けれど、その笑い声の中には、誰一人として「何を書けばいいのか分からない」という空気はなかった。