第45章 誕生日
「いやいや、そこは彼氏として知ってるでしょ!」
瀬呂が笑いながら肩をすくめる。
「……テメェら」
爆豪のこめかみに青筋が浮かぶ。
「俺が何でも知ってると思ってんのか?」
「思ってる!」
全員、ノータイムで即答。
「ふざけんな!!」
教室が爆笑に包まれる。
「だってユカリ先輩のこと一番知ってるの爆豪じゃん!」
「そうそう!」
「普段どんなもの食べてるの!?」
「好きな色は!?」
「最近欲しがってたものは!?」
「だから知らねぇっつってんだろ!!」
怒鳴り声が教室中に響く。
それでも誰も離れようとしない。
むしろ勢いは増すばかりだ。
「じゃあヒントだけ!」
「一万円以内!?」
「食べ物!?」
「実用品!?」
「手作り!?」
「…………」
爆豪は無言になった。
そして数秒後。
「……チッ」
盛大な舌打ちが落ち、周囲が一斉に静まり返る。
「……甘ぇもんは好きだ」
「おお!」
「あと、花」
「へえ!」
「それと――」
そこまで言って、爆豪はぴたりと口を閉じた。
「……何だよ?」
切島が身を乗り出す。
「それ以上は自分で考えろ」
「ええ!?」
「なんでだよ!」
「ケチ!」
「うるせぇ!!」
再び教室に怒声が響く。
その様子を少し離れた席から見ていた出久は、苦笑しながら呟いた。
「……でも、ちゃんと知ってるんだね」
「あ?」
「ユカリ先輩の好きなもの」
「…………」
爆豪が一瞬だけ黙る。
そして、ふいっと顔を逸らした。
「……付き合ってんだから、それくらい知ってて当然だろ」
その一言に――
「うわぁぁぁぁ!!」
「惚気た!!」
「爆豪が惚気た!!」
「うるせぇ死ね!!!」
今度こそ爆豪の怒号が、1年A組に響き渡った。