第45章 誕生日
そんなやり取りを少し離れた場所から聞いていた環は、それまで読んでいた本からふと顔を上げた。
そして、ごく自然な調子で尋ねる。
「……ユカリ」
「ん?」
「何か欲しいものある?」
その瞬間。
ほんの少しだけ、教室が静かになった。
確かに気になる。
誕生日なのだ。
欲しいものの一つや二つくらい、あるのではないか。
ねじれもミリオも、まるで答えを聞き逃すまいとするようにユカリへ視線を向ける。
ユカリは少しだけ考えた。
けれど、すぐに穏やかな笑みを浮かべる。
「ないよ」
「えー!?」
ねじれが大声を上げた。
「ないの!?」
「ない」
「本当に!?」
「本当に」
ユカリはくすりと笑う。
そして、少しだけ照れくさそうに続けた。
「みんながいてくれたら、それでいい」
――しん。
教室が、数秒間だけ完全に静まり返った。
ねじれも。
ミリオも。
環も。
周囲のクラスメイトたちも。
全員が固まっている。
そして――
「うわあああああ!!」
最初に復活したのは、ねじれだった。
勢いよくユカリの机に突っ伏す。
「好き!!!」
「急に!?」
ユカリが目を丸くする。
「そういうところ!!」
「どこ?」
「全部!!」
「ねじれ、雑!」
思わず笑いながらツッコむユカリ。