第37章 格闘訓練
「―――は、始め!」
切島の声が訓練場に響くのと、同時だった。
ドンッ!! と激しい爆発音が炸裂し、爆豪の姿が一瞬で消える。
あまりの速さに、切島は目を見開いた。
「はっ!?」
驚く間もなく、今度はユカリの姿までもが視界から消え去る。
右、左、後、前。
爆風が吹き荒れ、着地と踏み込みの衝撃が交互に弾け、訓練場のあちこちで凄まじい衝撃音が連続した。
床が削れ、空気が細かく震える。
切島は飛んでいく視線を追うだけで精一杯だった。
授業で見る戦闘とは、次元が違いすぎる。
ユカリは普段、あまり自分から前に出るタイプではない。
いつも冷静で、穏やかで、優しい。
そんな印象が強かった。
だけど、今のユカリは完全に「戦闘の顔」をしていた。
観察、分析、判断。
そのすべてが異常な速度で噛み合い、爆豪の爆発を紙一重のステップで躱していく。
死角へ回り込むユカリと、それを野生の勘で振り向いて迎撃する爆豪。
一秒にも満たない刹那の中で、息をのむような読み合いと駆け引きが何度も繰り返される。
「チッ!」
爆豪が舌打ちを漏らす。
けれど、その口元は愉しげに歪んでいた。
面白い。
そして――強すぎる。
瞬間的な最大火力なら自分の方が上だ。
それは間違いない。
だが、戦闘における総合力、判断力、あらゆる状況への対応力。
そのすべてが規格外だった。
少しでも隙を見せれば、その瞬間に意識を持っていかれるような、凄まじい圧力がユカリにはあった。
「っそこだァ!!」
爆豪がさらに踏み込み、爆風を纏って高速接近する。
だが、ユカリは一切動じない。
ほんの半歩。
たったそれだけ重心をずらし、爆豪の放った必殺の拳を完全に空に切らせた。
(!)
まずい、と思った時には、すでにユカリが目の前に潜り込んでいた。
爆豪の瞳が驚愕に見開かれる。
ユカリは極限まで体勢を沈めると、完全な至近距離から鋭い打撃を打ち込んできた。
爆豪は反射的に上半身を捻る。
ヒュッ、と頬のすぐ横を風が通り過ぎた。
ほんの数センチ。
避けられなければ、その一発で沈んでいただろう。