第37章 格闘訓練
だが――このまま終わるつもりもない。
『勝負しろ』
さっき向けられたその言葉。
彼が求めているのは、甘やかしではなく「圧倒的な強さ」だということも、ユカリは知っている。
「……じゃあ、やる?勝負」
その瞬間、爆豪の目の色がガラリと変わった。
子供っぽい苛立ちは一瞬で消え去り、全てを噛み殺さんとする、本物の戦闘の目になる。
「やる」
即答だった。
ユカリもそれを受けて、静かに笑みを深める。
「いいよ」
横で見ていた切島が、大興奮で目を輝かせた。
「え!? マ、マジっすか!?」
一年生最強候補の一人、爆豪。
そして、この一週間自分に稽古をつけてくれた、憧れの先輩であるユカリ。
切島にとっては、心から尊敬する二人の激突だった。
それが今、目の前で始まろうとしている。
「うわぁ……俺、とんでもねぇ特等席じゃんか……!」
切島は身震いするような興奮を抑えきれず、自ら壁際へと後ずさった。
訓練場の空気が、一瞬にして張り詰めたものへと変貌していく。
ユカリは、ハラリと落ちていた髪を後ろで一つに結び直し――不適に目を細める。
「手加減、しないよ?」
爆豪は、着ていた制服の上着を乱暴に脱ぎ捨て、床へと放り投げる。
ニヤリと好戦的な笑みを浮かべ、掌で小さく爆炎を弾けさせた。
「ハッ、そっちこそ手ェ抜いたらブッ殺すぞ」
橙色の夕日に照らされた訓練場で、二人の視線が激しく交錯する。
戦いの火蓋が今、静かに切って落とされようとしていた。