第37章 格闘訓練
数秒の後、爆豪は諦めたように舌打ちをし、不機嫌そうに視線を切島へ向けた。
「切島」
「おう?」
「……今日のテメェの動き。ユカリだろ」
その場の空気が、ぴたりと止まった。
切島が硬直する。
ユカリも動きを止める。
「あ」と切島が口を開き、同時にユカリも「あ……」と小さく声を漏らした。
二人揃っての露骨すぎる反応に、爆豪のこめかみに青筋が浮かぶ。
「分かりやすすぎんだよバカが」
完全に図星だった。
焦った切島が両手をブンブンと振って説明する。
「いや、別に隠してたわけじゃねぇっていうか、その……!」
「知ってるわ。じゃなきゃテメェの頭であんな動きできるわけねぇだろ」
「じゃあ、なんでそんなに怒ってんだよ!?」
「怒ってねぇっつってんだろ!!」
「いや、絶対怒ってるだろ!?」
噛み付く爆豪と、必死に焦る切島。
そんな二人を静かに見つめていたユカリが、ふっと口元を緩めた。
この不器用な後輩のご機嫌斜めの理由が、ようやく見えたのだ。
(……なるほど、そっか)
特別な関係になったとはいえ、別に付き合っているわけでもない。
それでも、自分に何も言わず裏で他の男に稽古をつけていたこと。
そしてその教えを受けた切島に一発入れられたこと。
それがきっと、彼にはどうしようもなく面白くなかったのだろう。
強さへの執着と、素直になれない独占欲。
それらを丸出しにしてイラついている爆豪の姿は可愛くもあり、ユカリの胸の奥を少しだけ甘くくすぐった。