第37章 格闘訓練
「なんでだよ!?」
「邪魔だ」
「理不尽すぎねぇ!?」
ユカリも思わず苦笑いを浮かべる。
「切島くん、別にここにいていいよ?」
「ですよね!?」
先輩のおかげで救われた顔をする切島だったが、それがかえって火に油を注いだ。
「チッ……!」
訓練場に盛大な舌打ちが響き渡る。
放たれた凄まじい威圧感に、切島は思わず引きつった顔で一歩後ずさった。
(普通に怖ぇ……!)
ユカリは切島を横目で見つつ、ゆっくりと立ち上がった。
「爆豪くん、本当にどうしたの?」
その問いに、爆豪は再びユカリを真っ正面から睨みつけた。
別に、二人がコソコソ隠し事をしていたと腹を立てているわけではない。
切島の真っ直ぐな性格上、姑息な真似をする奴じゃないことくらい爆豪も百も承知だ。
だが――気に入らない。
たった一週間で、あの切島がここまで化けたという事実が。
そして、その変化をもたらしたのが、目の前にいる先輩だということが、どうしようもなく面白くなかった。
強さに対して貪欲で、誰よりも敏感な爆豪だ。
ユカリの実力が本物であることくらい、とっくに知っている。
そのユカリが本気で教え込み、人をここまで変えられるのなら――
「勝負しろ」
低く重い声が、訓練場に響く。
切島は「……は?」と声を漏らし、ユカリも「え?」と目を瞬かせる。
けれど、彼女を見つめる爆豪の目は大真面目だった。
「ちょ、ちょっと待てって!」
切島は慌てて二人の間に割り込むと、そのまま爆豪の顔を覗き込むようにして叫んだ。
「爆豪、お前急に何言ってんだよ!?」
「テメェは黙ってろ」
「ひどくね!?」
ユカリは、そんな爆豪をじっと見据える。
「……なんで? 理由を教えて」
「なんでもいいだろ」
「いや、良くないよ」
「うるせぇ」
「説明して」
「うるせぇ」
「説明して」
「…………」
爆豪がぐっと言葉に詰まる。
ユカリも一歩も引かず、譲らない目で爆豪を見つめ返した。