第37章 格闘訓練
相澤が淡々と結果を告げる。
「勝者、爆豪」
当然の結末だ。
総合的な戦闘力では依然として爆豪が上。
誰も異論はなかった。
だが、訓練場に響く拍手と歓声は、負けた切島にも同じように向けられていた。
負けた。
だけど、確かに自分の力で戦い、一歩を刻んだ。
切島はゴツゴツした拳を強く握りしめる。
悔しい。
でも、それ以上に嬉しかった。
その頃、勝者である爆豪は、周囲の歓声に目もくれず立ち尽くしていた。
ゆっくりと自分の頬に触れる。
切島の拳が当たった場所が、僅かに熱を持って赤くなっていた。
痛みなんて大したことはない。
問題は、この妙な引っかかりだ。
あの体捌き、あの崩し、あの先の先を行く読みの鋭さ。
どこかで見た。
いや、知っている。
爆豪の眉間に深い皺が寄った。
脳裏に、ある人物の顔がはっきりと浮かび上がる。
いつもは気の抜けたような優しい笑顔。
けれど戦闘になると、すべてを見透かすように冷静になる、あの先輩。
「……ユカリ」
小さく、その名前を呟く。
そこから一気に思考が繋がった。
ここ一週間、放課後になると妙に疲れた様子で消えていた切島。
筋肉痛だと誤魔化していた理由。
そして、今日いきなり跳ね上がった格闘技術。
「………ハッ、他の奴鍛えやがって」
ぽつりと、苦々しげな声が漏れた。
観客席では、切島がクラスメイトたちに囲まれて手荒い祝福を受けている。
だが、爆豪だけは輪から離れた場所で、別の感情を燻らせていた。
ユカリと切島。
二人の特訓。
自分の知らないところで、ユカリがクラスの別の奴を鍛えていたということ。
なぜだか、それがほんの少しだけ。
面白くなかった。