第37章 格闘訓練
切島は目を細め、爆豪のすべての予備動作に神経を研ぎ澄ませた。
視線の向き、足の角度、肩の微かな揺れ。
すべてを見逃さない。
爆豪が動いた。
右へのフェイント。
いや、違う。それは見せかけだ。
その次、さらにその先。
爆豪は距離を取り、こちらを誘い込もうとしている。
(――なら、ここだ!!)
切島の目が見開かれた。
一瞬の隙を見逃さず、地面を蹴り飛ばすような勢いで踏み込む。
観客席で、出久が弾かれたように立ち上がった。
「切島くん!?」
轟も目を見開く。
「今のは……」
爆豪もその瞬間に気がついた。
――読まれた、と。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
切島が吠える。
全身全霊。
積み上げてきたこの一週間の、汗も、努力も、悔しさも、そのすべてをこの一拳に乗せる。
「漢気ィィィィィィィ!!!!!」
空を切り裂くようなストレート。
爆豪は寸前で回避を試みた。はずだった。
だが、半歩遅れた。
切島の「三歩先の読み」が、爆豪の反射速度を僅かに上回ったのだ。
ドンッ!!
乾いた打撃音が訓練場に響き、切島の拳が爆豪の頬を捉えた。
一瞬の静寂。
そして―――
「当たったァァァ!!」
観客席から地響きのような大歓声が湧き起こった。
「うおおおおお!!」
「切島ァァァ!!」
「マジかよ、爆豪に入れたぞ!?」
芦戸が飛び跳ね、上鳴が叫び、瀬呂も身を乗り出している。
出久は「すごい……!」と声を震わせ、轟も静かにその光景を見つめていた。
当たった。
本当に、あの爆豪に手が届いた。
切島自身が一番驚いていたその瞬間、ピーーーッ、と相澤のホイッスルが鳴り響いた。
「そこまで」
緊迫した空気を切り裂く、静かな声。
試合終了の合図だった。
切島はその場にどさりと座り込んだ。
「はぁ……はぁ……っ」
呼吸はズタズタで、身体中が痛む。
それでも、切島は心の底から笑っていた。