第37章 格闘訓練
「っらぁ!!」
至近距離で、爆豪の爆発が炸裂した。
轟音と衝撃が響き、砂煙が激しく舞い上がる。
普通なら何度も吹き飛ばされて気絶していてもおかしくない威力だ。
実際、腕は悲鳴を上げ、脚は鉛のように重い。
呼吸すらまともにできない。
それでも、切島は倒れなかった。
「まだだァ!!」
土煙を割って、切島が再び前へ出る。
その執念に、観客席が一気にざわついた。
「すげぇ……」
「めちゃくちゃ食らってんのに……」
「なんであいつ、まだ立てるんだよ……!」
だが、切島にはそんな声は一切聞こえていない。
視線の先には爆豪しかいなかった。
一方の爆豪も、戦いながら確かな違和感を覚えていた。
いつもの切島じゃない。
闇雲な攻撃は一つもなく、一挙手一投足に明確な意図がある。
爆発の衝撃をまともに受けず、いなすように流す。
さらにその力を利用して、こちらの重心を巧みに崩しにかかってくるのだ。
何度も、泥臭く、執拗に。
「チッ!」
爆豪が苛立ち交じりに舌打ちをする。
鬱陶しい。
だが、それ以上に脳裏に引っかかるものがあった。
(……誰に教わった、この動き、この間合い、この崩し……!)
切島が鋭く踏み込み、爆豪が爆発で距離を取る。
切島が追えば、また離れる。
その目まぐるしい攻防の最中、切島は不思議なほど焦っていなかった。
頭の中に、あの夕暮れの訓練場で聞いたユカリの声が響く。
『格闘は力比べじゃない』
『読み合いだよ』
『相手が賢ければ賢いほど、一歩先を読んじゃダメ』
『二歩でもない』
『三歩先』
『相手が何を考えるか』
『その先で何を選ぶか』
『さらにその先で何を捨てるか』
『そこまで考える』
あの時は難しくて意味が分からなかった。
だけど、今なら少し分かる。
爆豪は賢い。
戦いながら、恐ろしい速度で思考を巡らせている。
だからこそ。
読むならもっと先。
もっと奥だ。