第37章 格闘訓練
「おおおおお!!」
踏み込んだ切島の技が入り、爆豪の身体がわずかに浮いて大きく傾いた。
その瞬間、静まり返っていた観客席が一気に沸き立つ。
「今の何!?」
「切島、動き全然違くね!?」
驚きを隠せないのは周囲だけではない。
爆豪自身も、ほんの一瞬、確実に虚を突かれていた。
「チッ……!」
爆豪は着地と同時に手のひらで爆発を起こし、その反動で力任せに一旦距離を取った。
だが、その顔には獰猛な笑みが張り付いている。
言葉を交わさずとも、今の一撃だけで分かった。
切島は変わった。
確実に、鍛えて強くなっている。
再び構え直す二人を前に、観客席で見ていた轟がぽつりと呟いた。
「切島、格闘が上手くなってるな」
「ねえびっくりなんだけど……!?」
芦戸が目を丸くして身を乗り出し、その隣では出久がすでにブツブツと分析モードに入っている。
「重心の移動が少し前と全然違う……相手の力を完全に流してる。でも、短期間でどうやってあの技術を……?」
誰もその理由を知らない。
ただ一人――三年の校舎の窓から、遠くの訓練場を見下ろしていたユカリだけを除いて。
(……うん、いいステップ)
窓枠に肘を預け、ユカリは嬉しそうに目を細めていた。
まだ未完成で、粗削り。
ユカリから見れば、まだまだこれから。
それでも、あれは彼がこの一週間、必死に汗を流して掴み取った努力の形だ。
(頑張れ、切島くん)
声は届かなくても、心の中でエールを送る。
その想いに応えるように、切島は再び地面を蹴った。
その一歩には、確固たる自信が満ち溢れている。
もう、戦う前から「どうせ自分なんて」と諦めていた過去の彼ではなかった。