第37章 格闘訓練
「だから、一歩でも前に進んだって……自分に証明したいんス」
胸の奥に溜め込んでいた想いを一気に吐き出し、切島はハッと正気に戻った。
急に顔を真っ赤にして、熱くなりすぎたと慌てて頭を掻きむしる。
「あ、あ、なんかすみません! 俺ばっかり勝手に熱くなっちゃって……!」
ユカリはゆっくりと首を横に振った。
「ううん。いい話だったよ」
そして、優しい眼差しでまっすぐに切島を見つめる。
「切島くんはもう、ちゃんと前に進んでるよ」
「え……?」
思いがけない言葉に、切島は驚いて目を見開いた。
「だって、一週間前の切島くんだったら、こんな話、私にしなかったでしょ?」
「それは……」
「悔しいっていう言葉も、次は勝ちたいっていう言葉もね、ちゃんと前を向いてる人にしか出てこないものだから」
ユカリの真っ直ぐな言葉が、切島の胸の奥にじわっと温かく染み込んでいく。
何も言えなかった。
ただ、胸の奥が熱く焦がされるような感覚だけが、確かにそこにあった。
「だから明日、勝っても負けてもいい」
「え……?」
「ただ、後悔だけはしないこと」
その言葉が、やけに胸に響いた。
「全力でやって、それでも負けたらさ。またここで練習しよう。私、いくらでも付き合うから」
そう言って太陽のように笑う先輩の前で、切島は一度だけ、ぐっと俯いた。
込み上げてくる熱いものを気合いで堪え、唇を噛み締める。
そして、弾かれたように顔を上げた。
その瞳には、一週間前とは比べ物にならないほど、強い光が灯っていた。
「――はいっ!!!!」
気合の入った大きな返事が、夕暮れの訓練場に真っ直ぐに響き渡る。
明日の結果は、まだわからない。
勝てる保証なんてどこにもない。
でも、少なくとも。
切島鋭児郎は、一週間前より確実に強くなっていた。