第37章 格闘訓練
その様子を見て、ミリオが大爆笑した。
「ハハハ!懐かしいなぁ!基礎中の基礎、足運び(フットワーク)だ!」
「……俺も、ユカリと初めて手合わせした時、最初にそればかり叩き込まれた……」
環がいつになく真顔で、ぽつりと記憶を掘り起こす。
「来る日も来る日も、三時間……」
「さんじかんっ!?」
走り続ける切島が絶叫する。
「私もユカリに付き合ってもらったことあるー!」
ねじれが楽しそうに「ハーイ」と手を挙げた。
「ステップだけで二時間半くらいぶっ続け!最初はなんでこんなことするのー!?って思ったよね!」
ねじれは昔を懐かしんで笑う。
ユカリは、必死に足を動かす切島を見つめながら、ふっと柔らかく微笑んだ。
「でもね、正しい足運びができないと、どんなに強い技でも相手に届かなくなる。それに、自分がバランスを崩して危ないでしょ? 私もミリオたちも、そうやって基本をずっと繰り返してきたんだよ」
「うぐ……っ」
あまりにも優しく、そして真っ直ぐな言葉に、ぐうの音も出ない。
目の前の圧倒的な強さを持つ先輩たちが、全員この過酷な道を通ってきたのだ。
そう突きつけられて、男気あふれる切島がへこたれるわけにはいかなかった。
切島は「オスっ……!!」と声を絞り出し、がむしゃらに走り続けた。
***
そして、一時間後。
切島は完全に床へ大の字に転がっていた。
「ぜぇ……っ、ぜぇ……っ」
まさに満身創痍、死にかけだった。
喉の奥が焼けるように熱い。
結局、一時間まるまる基礎のステップと過酷な体幹作りに費やされ、切島の体力はとうに底をついていた。
ユカリがそんな切島のもとへ歩み寄り、視線を合わせるように、すっと腰を落とす。
「切島くん」
「はい……っ」
「立てる?」
「立てます……っ!」
息も絶え絶えになりながら、そこだけは即答だった。
漢がここで倒れたままいられるか、という意地が生み出した、魂の返事。
ユカリの目が、嬉しそうに細められた。
「うん。いい返事」
切島は膝をガクガクと震わせ、ふらつきながらもどうにか自力で立ち上がった。
足の筋肉はとっくに悲鳴を上げている。
それでも、彼は真っ直ぐに前を向いて先輩の前に立った。