第37章 格闘訓練
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放課後の第二訓練場。
体育館のような広い空間に、張りのある声が響き渡った。
「よろしくお願いします!」
切島が深々と頭を下げる。
向かい合うユカリも、動きやすそうなジャージ姿で「よろしくね、切島くん」と綺麗に一礼を返した。
訓練場には二人だけ。
……のはずだった。
だが、少し離れた端のほうに視線を向けると、そこにはあまりに見慣れた三つの影が座り込んでいた。
ミリオ、ねじれ、環。
どういうわけか、いつもの面々が当然のような顔でそこに居座っている。
ユカリは腰に手を当てて、呆れたように『観客席』を仰ぎ見た。
「なんでいるの?」
「見学!」
ミリオが満面の笑みで即答した。
「暇だからー!」
ねじれが楽しげに足をパタパタさせながら答える。
「……巻き込まれた」
環が視線を本に落としたまま、ぽつりと呟く。
まさに三者三様だった。
ユカリは小さくため息をついたが、わざわざ追い返すほどのことでもないと諦め、切島へと向き直る。
「じゃあ、始めようか」
「はい!」
待ってましたとばかりに、切島が両拳を力強く握りしめる。
やる気は十分、むしろ有り余るほどだ。
ユカリはそんな後輩の熱量が微笑ましいのか、くすくすと笑った。
「まず確認ね。切島くんは、格闘技って何だと思う?」
唐突な問いかけに、切島の動きがピタッと止まった。
「え?」
完全に予想外の質問。
切島は髪をガシガシと掻きながら、自分なりの答えを必死に絞り出す。
「その……殴るとか、蹴るとか、相手をブッ倒す技……っスか?」
ユカリは静かに首を横に振った。
「違うよ」
「えっ」
「格闘技は、相手を倒すための技術じゃない」
真剣に耳を傾ける切島を、ユカリの澄んだ瞳が真っ直ぐに見つめる。
「自分を守る技術。仲間を守る技術。そして――」
ユカリの声は静かだったが、広い訓練場に不思議なほど強く響き渡った。
「どんな状況でも、最後まで戦場に立ち続けるための技術」
切島は返す言葉を失い、その言葉の重みを深く噛み締めるように、ただ黙り込んだ。