第37章 格闘訓練
だが、隣の席から環がぼそっと低い声で呟く。
「いや……多分、一日目でそうなる……」
「えええ!?」
切島は目を見開き、信じられないものを見るような顔で絶句した。
ねじれはケラケラと笑いながら、楽しそうに頷く。
「ユカリの特訓って、見た目は優しそうなのに中身はめちゃくちゃキツいもんねー!」
「そ、そうなんですか……?」
切島が冷や汗を流しながら尋ねると、三人が「うんうん」と力強く頷いた。
完璧な満場一致だった。
その様子を見て、切島はさすがに少しだけ武者震いする。
―――だが、恐怖なんて微塵もなかった。
頭に浮かぶのは、昨日その光景を初めて目の当たりにした瞬間の衝撃だ。
あの凄まじい火力を誇る轟の猛攻を、ユカリは無駄のない動きで躱した。
そして電光石火の踏み込みから、一瞬にして完璧に制圧してみせたのだ。
力任せではない、技術でねじ伏せるその姿。
それを見た時、切島の心臓は跳ね上がった。
(すげえ……!!)
身体の内側から、言葉にならない熱い衝動が突き上げてきた。
頑丈さだけが取り柄の自分じゃ、あの領域には到底届かない。
だからこそ、激しく、痛烈に欲した。
(俺にも、あんな風に戦える力があれば……!)
思い出すだけで、今でも全身の血が沸き立つように熱くなる。
自分が心から惚れ込んだ、あの圧倒的で研ぎ澄まされた格闘術。
それをユカリから教えてもらえるのだ。
強力な先輩に鍛えてもらえるという未知の期待に、切島の胸はこれ以上ないほど熱く高鳴り始めていた。