第37章 格闘訓練
しかし、切島はぶんぶんと力強く首を横に振った。
「違うんス!」
その目はどこまでも真っ直ぐで、真剣そのものだった。
「通形先輩も、男気あふれてててめちゃくちゃ凄ぇっす!でも、俺が魂の底からカッケーって惚れたのは……ユカリ先輩の、あの無駄がなくて芯の通った格闘術なんです!」
「うーん……」
ユカリは小さく唸り、少し考え込んでしまった。
切島に緊張が走る。
断わられるかもしれない。
思わず拳を握りしめ、固唾をのんで次の言葉を待った。
だが、ユカリはすぐに微笑んだ。
「いいよ」
切島はパッと目を輝かせた。
「ほんとっスか!?」
「うん」
「っしゃあ、あざっす!!」
「ただし」
喜びかけた切島に向けて、ユカリが人差し指をすっと立てる。
「かなり厳しいよ?」
その目は優しいが、どこか昨日の戦闘訓練で見せた強者のものと同じだった。
「格闘って、結局は積み重ねなの。地味だし、痛いし、しんどい。ひたすら基礎の反復。たぶん、想像してるよりずっと大変だよ?」
切島はその言葉を聞きながら、不安になるどころか、どんどん笑顔になっていった。
そんなの、硬派で最高じゃねぇか、と。
彼は胸の前で硬化させた拳をゴツンと打ち鳴らした。
「望むところっス!!楽して強くなれるなんて思ってねぇです!」
男気あふれる即答に、ユカリも嬉しそうに目を細めた。
「よし。じゃあ今日の放課後からね」
「はい!!よろしくお願いします!!」
切島の元気な声が響いた瞬間、ミリオがそっとユカリの肩に手を置いた。
「ユカリ」
「ん?」
「未来が見える」
「どんな?」
「切島くんが三日後、酷い筋肉痛でベッドから動けなくなってる未来」
ミリオはさも重大な予言をするかのように、大真面目な顔で深く頷いてみせた。