第37章 格闘訓練
3年A組の教室は、翌日の昼休みも賑やかだった。
すぐ近くでミリオとねじれが楽しそうに騒ぎ、環はいつものように静かに本を読んでいる。
その隣の席で、ユカリは午後の課題をのんびりとまとめていた。
そんな平穏な空気の中、突如として教室の前扉が勢いよく開く。
「失礼します!!」
元気よく、地声の響く男気あふれる声。
そこに立っていたのは、赤髪をツンツンに立たせた少年だった。
ユカリはふと顔を上げ、意外な来訪者に目を丸くした。
「切島くん……?」
1年生が用事で3年の教室に来ること自体は珍しくない。
だが、切島がここに顔を出すのはかなり珍しかった。
切島はユカリの姿を見つけると、躊躇うことなく彼女の前まで歩いてきた。
そして、いきなり深く頭を下げる。
「お願いします!!」
あまりの勢いに、教室中が静まり返った。
環が驚いて本から顔を上げ、ねじれが面白そうに目を輝かせる。
ミリオにいたっては、すでにワクワクした顔で身を乗り出していた。
「俺に、あの格闘の技教えてください!!」
ユカリは完全に不意を突かれ、ぽかんと固まる。
「………へ?」
思わず、間抜けな声が出た。
切島はガバッと勢いよく頭を上げると、さらに熱を帯びた声で身を乗り出す。
「俺、昨日の授業見てマジで痺れたんです!あの轟相手に距離詰めて!近接で完璧に制圧して!めちゃくちゃ格好良かったっス!!」
教室の隅々にまで響き渡るほどの、凄まじい熱量だった。
周りの生徒たちも、何事かとこちらに視線を向けている。
ユカリは圧倒されながらも、気恥ずかしさに困ったように笑った。
「えっと……すごく嬉しいけど、でも、純粋な格闘ならミリオの方が上手いと思うよ?」
その瞬間。
「そうだよ切島くん!!」
ミリオが勢いよく立ち上がった。
ビシッと親指を立てて、満面の笑顔を作る。
「ユカリも確かにすごいけど、俺だって負けてないよ!?なんで俺じゃなくてユカリなのさ!?」
「あはは!通形必死すぎるって〜!」
すかさず横からねじれが笑いながらツッコミを入れる。
まさに必死の猛アピールである。