第36章 2on1
フィールド中央。
八百万はゆっくりと立ち上がり、ジャージについた砂を払った。
呼吸を整えながら、今までの戦闘を脳内で猛スピードで振り返る。
ユカリの動き。
轟の動き。
そして自分自身の動き。
その全部。
そして、ようやく認めた。
ずっと自分は、轟に合わせていた。
轟が前に出るから、支援する。
轟が攻撃するから、補助する。
確かに連携だった。
でも、違う。
それは二人で戦っているようで、実際は轟が一人で戦っているだけだった。
ユカリはそこを見ていたのだ。
最初から、ずっと。
八百万の表情が変わった。
何かを強く決意した顔。
それこそが、ユカリが待っていたものだった。
「轟さん」
八百万が呼ぶ。
振り返った轟に、彼女はまっすぐな声で告げた。
「わたくし、ありますの」
その声は、不思議なくらい迷いがなかった。
「ユカリ先輩に勝利する、とっておきのオペレーションが!!」
演習場の集音マイクがその言葉を拾い、観戦席が「おおおお!?」と一気に沸き立つ。
だが、轟は少し驚いていた。
八百万を見る。
今までの彼女じゃない。
いつもなら、確認する。
相談する。
一歩引いて遠慮する。
だが、今は違う。
完全に自分の意志で、前を見据えている。
その瞳の強さに、轟は小さく目を見開いた。
「聞いてください」
八百万が言う。
「……ああ、聞かせてくれ」
轟も深く頷く。
「―――私が囮になります」
一瞬、その場が静まり返った。
「は? 囮!?」
上鳴が叫び、瀬呂も「八百万が前に出るのか!?」と驚愕する。
轟も目を見開く。
「待て、八百万」
制止するのは当然だった。
八百万は支援役で、後方で作戦を立てるのがこれまでの役割だったからだ。
だが、八百万は首を振る。
「いいえ」
彼女は迷わない。
「私が前に出ます」
その目には、強い覚悟があった。
ユカリは、その表情を遠目に見届けて小さく笑う。
ようやく、来た。