第36章 2on1
二人の連携は格段に良くなっていた。
だが、決定打に欠ける。
轟の激しい氷撃をかいくぐった一瞬の隙に、ユカリはすかさず別の方向へと踏み込んだ。
狙いは、後方でサポートに徹していた八百万。
ユカリが一瞬で懐に入り、容赦のない近接打撃を叩き込む。
「くっ……!」
八百万が地面に手をつく。
ユカリの一撃は、威力を最小限に抑えられていた。
だが、完全に体勢を崩すには十分だった。
轟がすぐに間へ入ろうと身体を動かす。
しかし、ユカリは詰め寄る素振りも見せず、ただ静かに八百万を見下ろした。
「八百万さん」
観戦席の喧騒が、少し遠くなる。
「――本当に、これでいいの?」
八百万が顔を上げる。
その問いかけに、轟は眉をひそめた。
言葉の意味がわからない。
だが、八百万だけは違った。
その意味が、痛いほど胸に突き刺さる。
「本当の敵は待ってくれないよ」
「………!」
責めるわけでも、怒るわけでもない。
ただ、確かな事実を告げている。
言葉を掛け終えたユカリは、それ以上の追撃はせず、すっと音もなく後退した。
二人の反撃をいつでも迎え撃てるだけの、少し離れた位置で佇んで、静かにこちらを待っている。
観戦席では、上鳴が不思議そうに首を傾げている。
「え? 連携はさっきより全然良くなってるよな?」
「ああ、かなり噛み合ってるように見えるけど……」
瀬呂や切島も困惑していた。
出久は黙ったまま、何か引っかかるものを掴もうと必死に注視している。
その横で、相澤だけは腕を組んだまま、静かにグラウンドを見つめていた。