第36章 2on1
観戦席は、いつの間にか大盛り上がりになっていた。
フィールドの中央では、ユカリ、轟、八百万による三人の戦闘が、どんどん熱を帯びている。
「すげぇ……」
切島が息をのむように、思わず呟いた。
ユカリは、派手なタイプではない。
爆豪のように爆発を起こすわけでも、轟のように巨大な氷を出すわけでも、ねじれのような超火力を放つわけでもない。
だが、見ていてわかる。
強い。
とにかく、強いのだ。
相手の攻撃を最小限の動きで受け流し、位置を変え、誘導し、気づけば自分が最も有利な場所に立っている。
それはまるで、盤面全体を上空から見下ろして戦っているかのようだった。
「すごい……」
出久もノートを握りしめ、食い入るように見つめている。
「戦況把握能力が圧倒的だ……」
轟の氷結。八百万の支援。
二人を同時に相手にしているはずなのに、ユカリは微塵も追い詰められているように見えない。
むしろ、二人の動きを冷静に観察しながら、戦いをコントロールしているようにすら見えた。
出久はふと疑問に思い、隣のミリオに視線を向けた。
「でも、ユカリ先輩って中距離戦とかサポート戦が得意ですよね?」
「うん!」
「じゃあ近接戦は苦手なんですか?」
ミリオが一瞬、動きを固めた。
そして、堪えきれないといった風に吹き出した。
「いやぁ〜!」
肩を震わせているミリオの隣で、ねじれも楽しそうに笑っている。
環は深くため息を吐き、頭を押さえていた。
「あぁ……」
その反応に、出久たちの間に嫌な予感しか漂わない。
その時だった。
フィールドの空気が動く。
「轟さん、右!」
八百万の鋭い指示が飛ぶ。
轟が即座に反応した。
先ほどまでとは明らかに連携の質が違う。
八百万の指示と、轟の実行。
二人の歯車が、確実に噛み合い始めていた。