• テキストサイズ

【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第36章 2on1





しかし。

その絶対的な制圧能力をもってしても、ユカリを捉えることはできなかった。

すでに彼女はそこにはいない。

氷の最上部、さらにその先のビルの屋上へと、風のように軽やかな身のこなしで移動していた。

「速い……!」

​八百万が目を見開く。

その間にも、轟は一切足を止めることなく、さらに氷を放ち、障害物を破壊しながら前進を続けた。

完全に一人で戦う立ち回りだった。

観戦席で、相澤が小さくため息を吐く。

​「やっぱりか」

​「相澤先生?」

​隣にいたミリオが不思議そうに視線を向ける。

相澤はフィールドの轟を見据えたまま言葉を続けた。

​「轟は強い。それは全員が知っているし、だからこそ一人で大抵の事態を解決できてしまう……その結果、周りを使って戦うのが致命的に苦手だ」

​ミリオが「なるほど……」と、納得したように深く頷いた。

フィールド内では、八百万が必死に冷静さを保ちながら打開策を探っていた。

​「轟さん!」

​遮蔽物の影から、再び彼を呼ぶ。

​「一度引いてください! まず役割分担を!」

​「わかった」

​轟は短く返事をする。

だが、その次の瞬間には、再び一人でユカリの気配がする方へと突っ込んでいった。

​「わかってませんわーーー!!」

​八百万の、悲鳴のようなツッコミがグラウンドβに虚しく響き渡る。

観戦席からは思わず「ぶっ!」と上鳴たちの笑い声が漏れた。

​だが、轟は大真面目だった。

八百万の声は聞こえている。

無視しているわけでもない。

しかし、目の前の「敵」を捕まえなければならないという局面において、体が、そして今までの戦い方で染み付いた本能が、真っ先に動いてしまうのだ。

​(敵が見えた。なら、俺が捕まえる。それだけだ――)

​完全に個人戦の思考。

屋上からその様子を観察していたユカリは、やはり、と確信した。

​轟は優しい。

仲間のことも大切に思っている。

けれど、戦闘という場に身を置くと、全てを自分の肩に背負い、自分の力だけで解決しようとする悪癖が出てしまう。


/ 587ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp