第36章 2on1
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観戦席。
担任の相澤が腕を組んだまま、フィールドへ静かに鋭い視線を送っている。
そのすぐ近くでは、クラスメイトたちやミリオ、ねじれたちが固唾をのんで見守っていた。
彼らの視線の先。
立体的な市街地エリアを模したグラウンドβ。
無造作に転がる瓦礫。
そびえ立つビル群。
そして行く手を阻む障害物の数々。
実戦さながらの緊張感が漂うフィールドの中央。
先輩ヒーローとしてユカリが一人、凛と佇んでいる。
その正面に対峙するのは、轟と八百万。
「ルールは簡単」
ユカリはすっと表情を引き締め、二人を見据える。
「私が敵(ヴィラン)役。二人で私を捕まえられたら勝ち」
「了解しましたわ」
八百万が引き締まった表情で頷く。
その隣で、轟はユカリの姿をじっと見つめていた。
今、目の前に立っているユカリは、愛おしい憧れの人であると同時に、自分が追い越し、いつか肩を並べなければならない「一歩先を行くヒーロー」なのだ。
日頃は先輩を好きで追っているけれど、今はヒーローを目指す者として、超えるべき壁として目の前の先輩を見据えている。
轟の瞳に宿る熱が、甘い恋慕から、静かで鋭い闘志へと一瞬で切り替わった。
「……負けません、先輩」
恋焦がれる「男」としてではない。
今この瞬間は。
同じ道を志す。
「一人のヒーロー」として。
轟の真っ直ぐすぎる宣戦布告に、その場の空気が一気にピリリと引き締まった。
「うん。期待してる」
ユカリもまた、その鋭い眼差しを受け止め、挑戦を歓迎するように頷いた。
「―――始め!」
相澤の号令がグラウンドに響き渡った、その刹那。
轟の身体が、爆発的な勢いで前方へと飛び出した。
「轟さん!」
背後から八百万が慌てて声を上げる。
「待ってください、まず状況確認を――」
だが、轟の耳にその制止は届かない。
止まることなく右手を一振りすると、凄まじい轟音とともに巨大な氷壁が地面から突き出た。
一瞬にして市街地エリアの半分が白い氷で埋め尽くされる。
ドォォォォン!!
観戦席から「相変わらずエグい火力……」とざわめきが起こる。