第36章 2on1
続いて、ユカリが凛とした足取りで前に出る。
A組の視線が彼女に集まった。
「私が選んだのは、轟くん。それから八百万さん」
指名された二人が、それぞれ姿勢を正す。
「はい」
「わたくしですか?」
「二人とも、能力はすごく高い」
ユカリは本心からそう告げた後、少し言葉を選ぶように間を置いた。
「でも、優秀だからこそ『自分の正解』に頼りすぎる時があると思う。今回は、想定外に対する対応力や、自分以外の考え方を取り入れる訓練を一緒にやりたいかな」
その言葉の意図を察し、八百万は深く納得したように頷き、轟もまた静かに思考を巡らせるような真剣な目を向けた。
次はねじれだ。
「はーい!私はね〜!」
ぴょんぴょんと跳ねるように前に出るねじれに、1年生たちは身構える。
彼女の行動原理は予測不能だからだ。
「上鳴くん!それと芦戸ちゃん!」
「俺!?」
「やったー!」
飛び上がって驚く上鳴電気と、素直に喜ぶ芦戸三奈。
「二人とも動きが自由なの! だから、もっと自由にしたら面白いと思う!」
「すごい雑!」
耳郎が思わず突っ込んだが、ねじれはさらに言葉を続けた。
「でもね、二人とも感覚で戦うタイプだから、そこを爆発的に伸ばしたいんだよね!」
感覚派のねじれらしい、しかし的を射た理由に、上鳴と芦戸は嬉しそうに顔を見合わせた。
最後は、環。
全員の注目が集まる中、彼はすでに今すぐ消えてしまいたいと言わんばかりのオーラを纏って前に出た。
「……俺は」
消え入るような声で、彼は二人の名を呼んだ。
「常闇……それと、障子」
「はい」
「俺ですか?」
驚く常闇踏陰と障子目蔵に向かって、環はぽつりぽつりと、しかし丁寧に言葉を紡ぐ。
「二人とも、周囲を見る能力がすごく高い。……でも、自分を優先しない。だから今日は、もっと自分を前に出してほしい」
常闇が目を見開き、障子もまたその言葉の重みを受け止めるように表情を引き締める。
環は役目を終えると、逃げるようにすぐ後ろへと下がった。