第35章 常夏SPLASH
「あァ!? うるせぇぞテメェら!!全員まとめて沈めてやろうかコラァ!!」
そんな大騒ぎの中。
ぶかぶかのラッシュガードを着せられたユカリの隣で、轟だけが、一切笑わずに真っ直ぐな視線を爆豪へと向けていた。
お互いの視線がパチィィン!と火花を散らすようにぶつかり合う。
そこへ、流れるプールの中からひょっこりと顔を出したミリオが、大きく手を振って二人を呼んだ。
「おーい!そこのバチバチな二人も、早くこっちおいでよー!流れるプール、めちゃくちゃ気持ちいいからさ!」
ねじれも水面をパチャパチャと叩きながら「そうだよ、早く早くー!」と手招きしている。
そんな先輩たちからの誘いに、爆豪は鼻を鳴らし、一瞥しただけで吐き捨てた。
「誰が入るかよクソが。入るわけねぇだろ」
水に濡れるのも、ましてやこのお祭り騒ぎの輪に加わるのも、今の爆豪のプライドが許さない。
すると、その頑なな態度を見た轟が、爆豪の方を向いて淡々と言った。
「じゃあ、俺は入る」
轟はそう言うと、自然な動作でユカリの細い手首を引き、プールの方へと一歩を促した。
「先輩、行きましょう」
自分のすぐ目の前でユカリを連れて行こうとする轟の動きに、爆豪の眉間が一瞬で険しく跳ね上がる。
「……爆豪くんは入らないの?」
手首を引かれつつも、ユカリが少し名残惜しそうに振り返って爆豪を見上げた。
その潤んだ瞳で見つめられた爆豪は、チッと盛大に舌を打つと、ぶっきらぼうにユカリの手元を指差した。
「……入らねぇ。その荷物貸せ」
「え?荷物?」
「見りゃわかんだろ、テメェが持ってる防水ポーチとタオルだよ。濡らしたくねぇもんあんなら貸せっつってんだわ」
ひどく不機嫌そうな口調ではあるものの、要するに「外で荷物を見といてやる」という、爆豪なりの不器用な優しさだった。
近くでそれを見ていた出久が「かっちゃん、なんだかんだ言って優しいな……」という顔で苦笑している。
ユカリが「ありがとう」と笑いながら荷物を渡すと、爆豪はそれをひったくるように受け取った。