第35章 常夏SPLASH
その様子をじっと見ていた轟。
その目はどこまでも純粋で、悪気など1ミリも混ざっていない、完全な『天然』のそれだった。
轟は水着のポケットから、自分のスマートフォンと、さっきまで飲んでいたペットボトルをひょいと持ち上げて、爆豪の目の前に差し出した。
「じゃあ、俺の分も頼む」
「死ね!!!!!!!!!!!!」
プール全体に爆豪の魂の咆哮がこだました。
「誰がテメェの荷物持ちになるかクソ半分野郎がぁアアアア!!そこに置いて水没させんぞコラァ!!」
「何でだよ。お前どうせ水に入らねぇんだろ。手が空いてるなら持っててくれ」
「空いてねぇわ!!ユカリのバスタオルで両手塞がってんだよ眼球ひん剥いてよく見ろや!!!」
ギャンギャンと狂犬のように吠え散らかす爆豪だったが、轟は「あぁ、そうか。じゃあ足元にでも置いといてくれ」と全く気にする様子もない。
そのままユカリの手首を優しく引いたまま、流れるプールの水流に乗ってぷかぷかと進んでいってしまった。
「無視すんじゃねぇ半分野郎ーーー!!!」
プールサイドに取り残された爆豪の怒号が響き渡る。
結局、文句を言いながらも、轟のスマホをプールサイドの直射日光が当たらない影にちゃんと避難させてやっている爆豪。
その様子を後ろで見守っていた上鳴と瀬呂が、呆れを通り越してもはや拝むような目で爆豪の背中を見つめる。
「(……爆豪の奴、文句言いながら結局ちゃんと預かってやってる……)」
「(ツンデレの極みだな……)」
だったのも一瞬。
爆豪のその「口ではキレつつも結局はちゃんとやってくれる」という習性を、誰よりも熟知している派閥の連中が、この好機を見逃すはずがなかった。
「おっ、爆豪が荷物番やってくれんの!?」
真っ先に切島が、爽やかな笑顔で自分の防水ポーチを爆豪の腕に引っ掛ける。
「助かるぜ!ありがとな!」
「あァ!? 誰が荷物番だクソ髪ィイイ!! 押し付けんじゃねぇ!!」
吠える爆豪を全く恐れることなく、間髪入れずに上鳴と瀬呂も「悪い爆豪、これも頼む!」「サンキュー!」「マジ助かる!」と日焼け止めやスマホケースを次々と爆豪の胸元へ放り込んでいく。
「待てコラ!! 勝手に置いてくんじゃねぇブチ殺すぞ!!」