第35章 常夏SPLASH
さらに、プールへ向かう他の面々からも容赦なく声がかかる。
「バクゴー!これもお願い!」
「申し訳ありませんわ、お願いします」
芦戸が大きなビーチバッグを腕に押し付け、八百万がポーチを丁寧に差し出す。
なし崩し的にどんどん荷物が増えていく中、爆豪の『完璧主義で頼られたらクオリティを落とせない』職人気質が、最悪の形で発動してしまった。
「オイ!! テメェら全員、自分のポーチに名前書いとけっつっただろ!!混ざったらどうすんだクソが!!」
「峰田ァ!! 濡れたタオルを電子機器の近くに置くんじゃねぇブチ殺すぞ!!!」
今にも周囲を爆破しそうな勢いでブチ切れ散らかし、顔の血管をピキピキと怒張させながらも、爆豪の両手は驚異的なスピードで荷物を捌いていく。
女子のポーチは水濡れを徹底ガードするためにタオルの内側へ。
男子のスマホは直射日光を避けるために影のスペースへ一列に整列。
精密機器と濡れモノは完全にエリアを分離。
それはさながら、一流ホテルのクローク並みに完璧な手際だった。
「「「(めちゃくちゃ綺麗に分別してくれてる……!!)」」」
「じゃ、俺たちも行ってきまーす!」と、いつもの調子で流れるプールへと飛び込んでいくA組の面々。
「戻ってきたらテメェら全員、タダで荷物返してもらえると思うなよォオオオ!!!」
プールサイドには、ユカリのタオルと大量の荷物を抱え、険しい顔で吠え続ける爆豪の姿があった。
そんな凄まじい叫び声を背中で聞きながら、プールの中の出久は「かっちゃん……本当にちゃんとしてるなぁ……」と、遠い目で再び苦笑いするのだった。