第35章 常夏SPLASH
ユカリは目を大きく見開いて瞬きをし、思考が真っ白に染まるのを感じた。
目の前には、少しだけ耳を赤くして、けれど揺らぐことのない真っ直ぐな瞳で自分を見つめる轟の姿がある。
「……先輩が、あまりにも優しく笑うんで」
轟は少しだけ照れくさそうに、けれど深く愛おしむように口元を綻ばせた。
「……どうしても、我慢できなかった」
それはあまりに誠実で、少年の初々しさと、隠しきれない独占欲が入り混じった言葉だった。
ユカリは顔が一気に沸騰していくのを感じながら、心臓の早鐘を轟に聞かれないよう、ただ小さく呼吸を整えることしかできなかった。
少し離れた前方を流れていたミリオとねじれは、背後で起きたまさかの急展開に、一瞬だけ目を見開いた。
「わあぁぁぁ!!轟くん!?ねぇ通形見た!?見たよね!?今のキス!!」
「うおおおお!若さ全開!やるねぇ轟くん!!」
先輩二人が大興奮で水飛沫をあげる。
ただ一人、持ち前の鋭いセンサーで不穏な気配をいち早く察知していた環だけは、轟が顔を近づけた瞬間にフイッと完全に真後ろを向いていた。
「……お、俺は何も見てないから……」
水に半分浸かったまま、耳まで真っ赤にしてぶつぶつと呪文のように呟く環。
流れるプールは、真っ赤になってフリーズするユカリと、どこか満足げに微笑む轟を乗せて、ゆっくりと進んでいく。
「先輩、今日もかわいいです」
「っ……轟くんそれ毎回言ってる……!」
「だって、本当にかわいいので」
ユカリは、爆豪に着せられた少しぶかぶかの黒のラッシュガードの袖をぎゅっと握りしめた。
身を包む爆豪の過保護さと、唇に残る轟の熱。
あまりに贅沢な二人の狭間で、ユカリの顔は耳の裏まで真っ赤に染まっていく。
そんな彼女を乗せた浮き輪を、轟は満足げな笑みを浮かべたまま、そっと引き連れて水流の先へと消えていくのだった―――