第35章 常夏SPLASH
***
一方その頃、プール施設の入場ゲート前は、とんでもない大騒ぎになっていた。
「あァ!?完売だぁアアアアア!!!???」
殺気全開の猛ダッシュで受付に突っ込んできた爆豪だったが、目に飛び込んできたのは『本日分の当日券はすべて完売いたしました』という非情な電光掲示板の文字。
脳内では今も、ユカリと轟が密着しているイメージがリピート再生されている。
焦りと怒りが限界突破した爆豪は、窓口の強化ガラスを叩き割らんばかりの勢いで拳を震わせた。
「出せやコラァ! 中で身内が緊急事態なんだよ!! 通さねぇとここごと爆破――」
「ひっ、ひええええ!!!」
あまりの恐怖に、窓口のスタッフが悲鳴を上げてガタガタと震え出す。
その時。
「あ、あの……っ!」
爆豪のすぐ後ろの列で、一緒に行くはずだった連れにドタキャンされ、余ってしまったチケットをどうしようかと困り果てていた一般客の男性(おっさん)が、恐怖のあまりにパスケースを差し出してきた。
「俺、急に連れが来れなくなって、チケット1枚余ってるんだけど……!あげる、タダであげるから命だけは……!!」
おっさんはガチのヴィランに絡まれたと完全に誤解し、涙目で命乞いをしている。
爆豪はギラリと猛獣のような目でそのチケットを睨みつけると、懐から財布を引っ掴んだ。
「……あ?いくらだ」
「ご、ごご、五千円、です……っ!」
「あァ!?」
爆豪は思いきり顔をしかめると、財布から一万円札を一枚引き抜き、おっさんの手のひらにバシィン!と力任せに押し付けた。