第35章 常夏SPLASH
それを着水プールのすぐ目の前で、待ち構えていた男たちが逃すはずはなかった。
「おいおいおいおいおい!!! 見たかよ今の!!! 完全に抱き合って滑ってきたろ!!!」
上鳴が防水ケースに入ったスマホを両手で固く握りしめ、鼻息を荒くして興奮する。
「着水した後も手を繋ぎっぱなしじゃねぇか! 何だあの少女漫画空間はよォ!!!」
瀬呂が自分の頭をガシガシと掻きむしりながら、羨ましさのあまり天を仰いだ。
その隣では、峰田が「轟の野郎、濡れ髪で王子様ぶってんじゃねぇぞクソが!!!」と、プールサイドの床を両手でバシバシと叩きながら悔し涙を流している。
まさに阿鼻叫喚の男たちのなかで、瀬呂がハッとして上鳴の肩を激しく揺さぶった。
「おい上鳴!今のちゃんと撮ったか!?」
「撮ってねぇよバカ! 眩しすぎてシャッター押せなかったわチクショー!!」
上鳴が悔しそうに顔を歪める。
あまりの尊さと美男美女オーラに圧倒され、肝心なところで指が硬直してしまっていたのだ。
フェンスの少し後ろでは、水着姿の芦戸や麗日、葉隠たちA組女子グループが、両手を頬に当てて「キャーキャー!」と黄色い悲鳴を上げて大盛り上がりしていた。
女子たちにとっては、この甘酸っぱいハプニングは格好のエンタメである。
「おーい!二人とも最高の滑りだったよー!!」
さらにその後ろから、満面の笑みで大きく手を振るミリオと、目をキラキラと輝かせたねじれがやってきた。
「ねぇねぇユカリ!スライダーどうだった?轟くんの胸の中、ドキドキした!?」
「はい!?」
ねじれがプールから上がってくるユカリの元へ真っ先に駆け寄り、興味津々で質問を浴びせる。
さらにその後ろでは、環が「……やっぱり、直視できない……眩しすぎる……」と、出久の背中に隠れて完全に魂を飛ばしている。
「あああ、天喰先輩しっかりしてください……!」
出久が引きつった笑顔で環を支える。
轟とユカリは、まだ繋いだままの手の熱さを感じながら、そんな騒がしい仲間たちの輪の中へと、照れくさそうに足を踏み入れるのだった。