第35章 常夏SPLASH
「わっ……!」
急激なカーブに差し掛かった瞬間、遠心力で身体が大きく振られ、ユカリの体勢が崩れそうになる。
あまりの恐怖とG(重力)にユカリは無我夢中になって、轟の両腕にすがりつくようにギュッと掴んだ。
腕の中に、ぎゅっと飛び込んできた身体。
必死に自分を頼って、水着越しに柔らかな体温を押し付けてくるユカリの姿に、轟の胸の奥から何か愛おしい感情が爆発した。
そして、スライダーは最後の直線へと突入する。
視界が一気に開け、目の前に広大な着水プールが迫った。
ドッパァアアアアアン!!!!
凄まじい水飛沫が場内に吹き荒れた。
あまりのスピードと着水の衝撃に、一人用の浮き輪は耐えきれずにひっくり返り、二人はプールの中へと投げ出されてしまった。
――ゴボゴボ、と泡の音が響いた次の瞬間。
ザッバァ! と、ほぼ同時に二人の頭が水面に飛び出した。
前髪も、全身も、頭から足の先までずぶ濡れ。
ユカリが顔の水を拭いながら隣を見ると、同じようにずぶ濡れの轟が髪をかき上げていた。
目が合う。
一秒。
二秒。
そして。
「……ふっ」
ユカリが吹き出した。
「すごかったね、今の……!」
アクシデントによるスリルと爽快感で、ユカリの顔から恥ずかしさが消え、弾けたような満面の笑顔がこぼれる。
その楽しそうな笑い声につられるように、轟の端正な顔立ちにも、ふっと柔らかい笑みが浮かんだ。
「ああ……すごかった」
水の中で見つめ合い、自然と笑い合う二人。
轟は先にプールサイドに足をかけると、水の中にいるユカリに向かって、大きな、水滴のしたたる手をそっと差し出した。
「立てますか」
「うん、ありがとう」
ユカリがその手をしっかりと握り返し、轟の力に引かれて水面から立ち上がる。
濡れた髪。
肌に張り付く水着。
飛び散る水飛沫。
そして差し伸べられた手――
まるで映画のラストシーン。
その一連の光景は、あまりにもドラマチックで、プール全体の視線を釘付けにするほど美しかった。