第35章 常夏SPLASH
「……っ、恥ずかしい………」
ユカリは潤んだ瞳で顔を覆って、小さく甘く鼻にかかった声を漏らす。
轟は回した腕にさらにぐっと力を込め、ユカリのしなやかな身体を自分の胸へと隙間なく抱き寄せた。
そして、これ以上ないほど甘い声で囁く。
「俺は」
少しだけ腕に力が入る。
ぎゅっ、と優しく抱き寄せるように。
「嬉しいです」
「………っ」
ストレートすぎるその告白に、ユカリの心臓はドクンと大きく跳ね上がった。
嬉しいと言って、さらに愛おしそうに腕の力を強めてくる後輩。
ユカリはもう、彼の腕の中で真っ赤になって蕩けてしまいそうだった。
そんな二人のあまりにも絵になる甘いやり取りを見ていたスタッフは、次の指示を出すのも忘れて思わず見惚れてしまっていた。
(やだ……美男美女……っ! なにこの少女漫画の世界……!!)
だが、ハッと我に返って慌てて拡声器を握り直す。
「あ、えっと!それじゃあ行ってらっしゃい!!」
甘い空気も束の間。
ドン、とスタッフが一人用の浮き輪を後ろから力強く押し出す。
その瞬間、ユカリと轟の身体は、ものすごい勢いで未知の暗闇ルートへと滑り落ちていった。
「っ!?」
最新の個性対応型メガ・スライダーは、想像を絶する激しさだった。
ほぼ直角に近い急斜面を猛スピードで滑り降り、目まぐるしく変わるネオンの光の中を激しく蛇行していく。