第35章 常夏SPLASH
「ぶはははは! おい今の聞いたか!?『は?』の時の声、マジで地獄の底から響いてたぞ!!」
「絶対今頃、部屋で大爆破してんぞアイツ!」
「やべぇ、早くスライダーの下行こうぜ! 轟たちが降りてくるのと、爆豪がここに向かってかっ飛んでくるの、どっちが先か賭けようぜ!」
爆豪派閥の悪ノリは最高潮に達し、男子たちは大爆笑しながらスライダーの着水プールへと走り出す。
一方その頃、雄英の寮の爆豪の部屋では、信じられないほど冷え切った、おぞましい殺気が満ちていた。
「……あの、半分野郎……ッ」
怒鳴り散らす声ではない。
低く、地を這うような、本気の地鳴りのような怒声。
ギリ、と奥歯が軋む音が静かな部屋に響く。
朝から既読がつかなかった理由が、あの半分野郎とプールで密着するためだったなどと、万に一つも思いたくはない。
だが、上鳴のあの慌てぶりからして、轟がユカリに触れているのは紛れもない事実なのだろう。
(どさくさに紛れてなにユカリに触ってやがる……ッ)
瞳の奥にドス黒い炎を宿した爆豪は、次の瞬間には驚異的な速度で動き出していた。
机の上の財布とスマートフォンを乱暴にポケットへと突っ込む。
自分はプールに入る気などさらさらない。
だが、クローゼットのハンガーから、自分の黒いラッシュガードを無意識に引っこ抜いた。
(クソみたいな水着着て他の男にジロジロ見られてんだろ、あのバカ先輩は……ッ!)
他の男の視線からも、そして何よりあの半分野郎の手からも、一刻も早く彼女を引っ剥がして、自分の服で全部隠してやりたかった。
ラッシュガードを腕に抱え、必要最低限の荷物だけを持った爆豪は、寮のドアを蹴破らんばかりの勢いで飛び出していく。
ユカリのもとへと向かうその足取りは、すでにただの災害そのものだった。