第35章 常夏SPLASH
だが、そんな平和な空気は、ねじれが場内の巨大な看板を見つけたことで一変する。
「ねぇねぇ! あそこにあるウォータースライダー、すっごく高くて楽しそう! 行ってみようよ!」
「いいね波動さん! いざ、スライダーへ!!」
「レッツゴ〜!!」
二人は息を合わせて拳を突き出すと、弾みをつけてスライダーの受付へと向かって駆け出した。
しかし、ユカリと環がその後を追おうとした時、ユカリはある『お触れ書き』の看板に目を留めて足を止めた。
そこには、ピンク色の文字で大きくこう書かれていた。
【本日限定:週に一度のカップルデー! 特設メガ・スライダーは2人乗りでの滑走専用となっております。カップルデーは一人乗り用の浮き輪しか使用できません。男女で密着してご搭乗ください】
(あ、カップルデーなんだ……。一人用の浮き輪に二人で入るって、めちゃくちゃ密着しなきゃいけないんじゃ……)
ユカリが納得したのも束の間。
前方では、受付のスタッフから説明を受けたミリオとねじれが、特に戸惑う風でもなく「なるほど!」と頷き合っていた。
スタッフから手渡されたのは、本来なら一人で使う用の、小さくて丸い浮き輪。
普通なら、年頃の男女がこれに二人で体を押し込んで密着しろと言われれば、少なからず照れたり、気まずくなったりするものだ。
「行くよ波動さん!」
「うん! 飛ばされないようにしなきゃね〜!」
だが、そこに一切の邪念はなかった。
まるで恋愛っ気のない無邪気な二人。
お互いを100%信頼しきった純粋な『相棒(バディ)』として、二人は一つの小さな浮き輪を受け取ると、階段を登って行った。
(あはは、本当にあの二人らしいな……)
遠ざかっていく二人の背中を見ながら、ユカリは愛おしさを覚えてクスリと笑った。
この二人とは、どんなに歳をとっても、一生変わらない最高の友達でいられる自信がある。