第35章 常夏SPLASH
「もちろん、環も行くよね!」
ミリオに話を振られ、少し離れた一人用のソファで静かに気配を消そうとしていた環が、びくりと肩を揺らした。
「……屋内レジャープール……」
ぽつり、と消え入りそうな声で呟く。
「つまり……人がたくさん……」
想像しただけで胃が痛くなってきたのか、環の顔がみるみる青ざめていく。
「……無理だ……」
今にもソファと一体化しそうなくらい小さく縮こまる姿を見て、ミリオは思わず吹き出した。
「ははは!大丈夫だって! 貸切じゃないけど、サーがくれたのは特別な優先パスだから、そんなに並ばずに済むし空間も広いからさ!」
しかし、環は「そういう問題じゃない……」と首を横に振る。
そんな幼馴染の様子に、ユカリはくすっと笑うと、そっと彼の隣へ移動した。
「環」
優しく名前を呼びながら、少しだけ顔を覗き込む。
「一緒に行こうよ。だめ?」
真っ直ぐな瞳が、自分だけを見つめている。
環は一瞬だけ視線を泳がせ、困ったように小さく息をついた。
ユカリのその眼差しには、どうしても昔から敵わない。
「……ユカリは、行きたいの」
「うん」
ユカリは迷いなく頷いた。
「息抜きもしたいし、みんなと一緒なら絶対楽しいと思う」
そう言って、ふわりと笑う。
その笑顔を見つめたまま、環はしばらく黙っていた。