第34章 恋情増幅・後日談
出久が周囲をサッと見回し、トレイの上で身を乗り出すようにして声を一段と潜める。
「……ねぇ、轟くん。そういえば……ユカリ先輩、昨日は大丈夫だった? その……個性の事故、解決したんだよね?」
出久なりに先輩の身を本気で心配しての問いだったが、その言葉を聞いた瞬間、轟の動きがピタリと止まる。
「……ああ、問題ねえ。……完全に、解決した」
轟はいつもの無表情のまま、静かに、けれど酷く低い声で返した。
その脳裏には、昨日、保健室のベッドの上で、自分の指によってトロトロに蕩けさせられていたユカリの姿が鮮明に蘇っていた。
恥ずかしさに顔を真っ赤に染めながら、自分の与える指の快感に耐えきれずに可愛く鳴いて、最後は涙を浮かべて果ててしまった先輩の、あの無防備で淫らな姿。
(今朝、他の男に告白されてたみたいだが……関係ねえ。先輩に一番最初に指を入れ、あの淫らな声で啼くまで、隅々まで暴いて蕩けさせたのは俺だ……)
いつも通りのポーカーフェイスの裏で、轟の胸の奥には、爆豪にすら邪魔させたくないという、狂暴なまでの静かな執着が渦巻いていた。
「そ、そうなんだ! よかったぁ……!」
まさかその『解決方法』が、自分の想像を遥かに絶するほど生々しく濃厚な指愛撫によるものだったとは夢にも思わない出久は、無邪気に胸を撫で下ろしている。
そんな、それぞれ異なる歪んだ独占欲を滾らせる二人の視線は、無意識のうちに再び遠くの3年生のテーブルへと向けられていた。
爆豪から放たれる野生動物のようなギラついた殺気。
轟から立ち上る底冷えするような執着のオーラ。
その二つの巨大な圧力に正面から挟まれている環は、何食わぬ顔でご飯を食べているユカリの隣で、一人だけ生きた心地がしていなかった。
昨日絶対に何かがあった。
そう確信してはいるものの、二人のあまりの恐ろしさに環はもう完全にキャパシティをオーバーしている。
「……帰りたい」
たまらず環から漏れ出た重いため息に、ユカリが不思議そうに振り返った。
「どうしたの環、食欲ない?」
「……限界だ……」