第34章 恋情増幅・後日談
男子生徒は最後に、壊れそうなほど深く頭を下げた。
「好きです!」
朝の中庭は、完全に人だかりができていた。
遠巻きに見守る生徒たちや、スマホを出そうとして友達に「やめとけって!」と止められている生徒もいる。
そんな中で、ユカリは困ったように笑った。
そして。
「ありがとう」
まず、そう言った。
男子生徒が、弾かれたように顔を上げる。
「すごく嬉しい。勇気を出して言ってくれてありがとう」
それは本心だった。柔らかく、包み込むような優しい声。
けれど、その続きの空気で、男子生徒は結果を悟った。
「でも、ごめんね」
ユカリは申し訳なさそうに頭を下げた。
「気持ちには応えられないの」
優しく、けれど曖昧にしない、静かな断り方だった。
男子生徒は数秒間固まったあと、どこか切なげに苦笑した。
「……ですよね」
「ごめんね」
「いや! 謝らないでください!」
彼は慌ててぶんぶんと手を振る。そして、ほんの少しだけ晴れやかな顔になった。
「でも、言えて良かったです」
そう言って、彼は少し照れたように笑う。
「本当にありがとうございました!」
もう一度深く頭を下げると、彼はそのまま弾かれたように走り去っていった。
ユカリはその一生懸命な背中を、そっと見送る。
(みんなに、たくさん心配かけちゃったんだな……)
切なさと温かさが混ざった複雑な胸の痛みを抱えながらも、ユカリは小さく息を吐き、いつもの凛とした顔に戻って、教室へと歩き出すのだった。