第34章 恋情増幅・後日談
「……いいから行こう」
野次馬精神旺盛な二人の背中を、環が控え目に押しながら、教室の方へと歩き出す。
ユカリはそんな三人の背中に苦笑しつつ、二年生の必死な様子に押され、少し離れた中庭の木陰へと場所を移した。
ユカリと男子生徒の近くを通りかかっていた生徒たちが、察したような顔をする。
「あー……まただ」
「何人目だろ」
「今週だけで三人目じゃない?」
そんな声まで聞こえてくる。ユカリは困ったように苦笑した。
実はここ最近、こういうことが増えていた。
あの林間合宿での誘拐事件。
そして数日間の行方不明。
最悪の結末を想像した人も少なくなかったらしい。
だからこそ、今まで気持ちを隠していた人たちが行動し始めたのだ。
後悔したくないから。
伝えないまま終わるのは嫌だから。
男子生徒は深呼吸を一つした。
「お、俺……前から先輩のこと好きでした!」
周囲がにわかに静まり返る。
「体育祭の時も文化祭の時も見てて……その……すごく格好良くて……優しくて……」
言葉が詰まる。
それでも、彼は必死に言葉を続けた。
「あの事件のこと聞いた時……もう会えなくなるかもしれないって思ったら怖くて……。だから伝えないまま終わるのは嫌だと思って……!」
真っ直ぐな、魂の叫びのような告白だった。
ユカリは目を丸くする。
そして、胸が少し痛んだ。
こんなふうに思わせてしまったのだ。
あの事件は、自分が思っていた以上に、たくさんの人を不安にさせていたのだと痛感する。