第33章 恋情増幅(R18)
布団の暗闇の中で、ユカリの頭は急速に冷え固まっていく。
(……やってしまった……)
個性をかけられた直後、プロヒーローが事例として見せてくれた「後日談」の資料。
そこには、個性のせいで理性を失い、衝動のままに相手を押し倒してしまった悲惨な『押し倒し事案』の数々が記されていた。
あの時はどこか他人事のように思っていたのに。
(最初に轟くんを押し倒して、キスして指まで入れられて……最後に爆豪くんを自分の意志で押し倒して、中まで入れさせて……!)
一日に、しかもA組の後輩2人を立て続けに組み敷き、こんな破廉恥な情事にまで及んでしまった。
個性のせいだったとはいえ、最後の爆豪に関しては、言い訳のしようもないほど完全に自分の本心から出た言葉だ。
(もう明日から外歩けない……みんなに、どんな顔して会えばいいの……!?)
「事案」そのものになってしまった己の行動への恐怖と焦りで、ユカリの心臓はさっきとは違う意味でバクバクと激しく鐘を打ち鳴らし始める。
そんなユカリの焦燥を察してか、爆豪が容赦なく布団をぐいっと引き剥がした。
「な、なに……っ」
夕闇のなか、顔を真っ赤にしながら涙目で睨むユカリ。
爆豪はその濡れた顔を至近距離で見下ろし、逃がさないようにその細い肩をがっしりとベッドに組み敷いたまま、不敵に口元を歪めた。
「何一人で勝手に焦ってんだよ。……全部俺のせいにすりゃいいだろ」
ユカリの頭の中のパニックを、その傲慢で力強い言葉が一瞬でせき止める。
爆豪の紅い瞳は、彼女がどんなに頭を抱えようとも、二度と他の男に手放す気などないという強固な確信に満ちていた。
「――っ」
爆豪の傲慢で、けれど彼女の罪悪感をすべて引き受けるような言葉が、ユカリの胸の奥にまっすぐ突き刺さる。
ドクン、と心臓が切なく跳ね上がった。
これは、個性の快感や暴走で得られる熱じゃない。
自分をこれほどまでに求めてくれた爆豪の執念が、ユカリの心を本気で揺さぶった証拠だった。