第33章 恋情増幅(R18)
「……ユカリ、顔赤い」
ミリオとねじれが席を外した瞬間、環は手元に広げた本に視線を落としたまま、ぽつりと呟いた。
「え?あ、あ、赤くないよ……!?」
あからさまに動揺して、さらに髪で顔を隠そうとするユカリ。
その過剰な反応に、やはり何かがあったのだと確信する。
環はパサリ、と本のページをめくった。
ユカリを問い詰めるような真似はしたくない。
彼女がこれ以上、恥ずかしさで泣きそうになるのを見たくはなかった。
「別に……詳しくは聞かないけど」
本の文字を見つめたまま、環は少しだけ声を低くして、核心を突いた。
「……18時まで、持つの」
「──っ、」
ユカリの息が止まる。
例の個性。
その効果時間が切れるのは今日の18時だ。
環は、ユカリがこれ以上無茶をせず、あと数時間残っているこの状態を、無事にやり過ごせるかどうかだけを心配していた。
「……がんば、る……。あと少しだから、席でじっとしてる……」
小さく消え入りそうな声で呟くユカリに、環は本から少しだけ視線を上げると、「……ん」と短く返した。
だが、ユカリが前を向いた瞬間、環は小さく息を吐き、本の角を握る指先にほんの少しだけ力をこめた。
ユカリを見守りたい気持ちと、18時までまだ数時間残っているという微かな胸のざわつき。
(これ以上、何もないといいけど……)
そんなやり場のない思いを、彼は静かに本のページを捲ることで、そっと心の中にしまい込んだのだった。