第33章 恋情増幅(R18)
ユカリはまだ、誰も選んでいない。
爆豪のものになってもいなければ、目の前の轟を選んだわけでもないのだ。
付き合ってもいない自分が「ユカリに触るな」と制限をかける筋合いなどないことくらい、爆豪だって分かっていた。
──だが、だからといって黙って引き下がる男かと言われれば、絶対に違う。
「……おい」
爆豪は轟の目の前まで歩み寄ると、その胸ぐらを掴まんばかりの至近距離で睨みつけた。
ポケットの中で、拳が血が滲むほど強く握り締められる。
「アイツがまだ……誰のものでもねぇってことくらい、分かってんだろうなァ」
地を這うような、低く掠れた声。
好きな女が、自分以外の男の手で「女」の顔にさせられた。
その嫉妬と独占欲で、爆豪の目は、狂いそうなほどの殺気が溢れ出ている。
轟は何も言わない。
ただ静かに、その視線を受け止めている。
爆豪は鋭く睨み据えたまま、さらに低い声で吐き捨てた。
「個性事故だろうが何だろうが……調子に乗ってんじゃねぇぞ、半分野郎」
一拍置く。
そして、はっきりと言い切った。
「次にアイツが暴走すんのは――俺の前だ」
その瞳には、一切の迷いはなかった。
まだ何も決まっちゃいない。
ユカリはまだ、誰のものでもない。
だからこそ、絶対に譲る気はなかった。
轟への激しい対抗心と、ユカリを誰にも渡したくないという強い想いを剥き出しにしたまま、爆豪は真正面から宣戦布告を叩きつけた。