第33章 恋情増幅(R18)
だが、怒りに燃え上がる一方で、爆豪の頭は驚くほど冷静だった。
ユカリが「好意を抱いている相手の前で理性を失ってしまう」という個性事故に巻き込まれたことは知っている。
そして、たった今。
顔を真っ赤に染め、息を乱し、制服まで着崩したユカリが保健室から飛び出していった。
その光景だけで、すべてが繋がった。
あの個性が発動する条件は一つ。
――好意を抱いている相手が、すぐ近くにいること。
考えるまでもない、轟だ。
その事実を理解した瞬間、爆豪の胸の奥を黒く重たい嫉妬が一気に焼き尽くしていく。
(……チッ)
奥歯を噛み締める。
胸の中が、どうしようもなく苛つく。
ユカリが、自分ではない男の前であんな顔を見せた。
それだけで理性が焼き切れそうだった。
バチッ――!
バチバチバチッ!!
怒りに呼応するように両手から激しく火花が散る。
爆豪はそれを無理やり抑え込むように拳をポケットへ突っ込み、そのまま荒々しい足取りで保健室へ向かった。
廊下を踏み鳴らし、勢いよく扉を蹴り開ける。
ガンッ!!
鈍い音が静かな保健室に響く。
中には、制服を整え終えたばかりの轟が静かに立っていた。
「……爆豪」
轟がわずかに目を細める。
一瞬で空気が張り詰めた。
凍りつくような静けさと、爆豪の怒気がぶつかり合い、保健室の温度が狂ったように揺らぐ。
今すぐ胸ぐらを掴んで、ユカリに何をした、と問い詰めたい。
そんな衝動が喉元まで込み上げる。
それでも爆豪は、かろうじて踏みとどまった。