第33章 恋情増幅(R18)
資料を抱え、ユカリは早足で職員室へと向かっていた。一刻も早く用事を済ませて、安全な教室へと戻りたかったからだ。
だが、その途中のことだった。
保健室の前を通りかかると、引き戸がガラガラと勢いよく開き、中からリカバリーガールがひょっこりと顔を出した。
ユカリの姿を見るなり、その目がパッと輝く。
「おや、ユカリ!ちょうどいいところに!」
「えっ、あ、リカバリーガール?お疲れ様です……」
嫌な予感がして思わず足を止めると、リカバリーガールはせっかちに手招きをしてきた。
「悪いんだけどねぇ、急な呼び出しがかかっちまってさ!中に足を痛めた生徒がいるんだよ。あんたの治癒で、ちょっと代わりに治してやっておくれ!」
「え!?い、いや、私いま職員室に資料を――」
「頼んだよ!」
ユカリが事情を説明して断る隙など微塵も与えず、リカバリーガールは慌ただしく小さな体を揺らして廊下の向こうへと去って行ってしまった。
残されたユカリは、ぽつんと保健室の前に立ち尽くした。腕の中には職員室に届けるべき資料がある。
(どうしよう……でも、怪我人がいるなら放っておけないし……)
ちらりと保健室の奥へ視線を向ける。
(……うん。私の治癒なら一瞬で治せる。パパッと治療して、すぐに職員室へ向かえば問題ないよね)
そう自分に言い聞かせ、ユカリは開いたままの引き戸から保健室の中へと足を踏み入れた。
「失礼します……リカバリーガールの代わりに――」
そこまで言って、ユカリの全身の血の気が引いた。
白いカーテンの奥。
ベッドの上に足を伸ばして座っていたのは、制服のスラックスの裾を膝まで捲り上げた――轟焦凍だった。
(……まずい……!!)
ユカリの脳内で、警報が鳴り響く。
その距離、わずか三メートル。
視線が合ったその瞬間。
「……ユカリ先輩?」
轟は驚いたように目を丸くした。
同時に、ユカリの胸の奥から、爆発的な愛おしさと、彼に触れたいという猛烈な衝動が押し寄せてくる。
「と、轟くん……どうしてここに……」
ユカリは資料を胸に抱きしめ、限界まで身体を強張らせながら、かろうじて声を絞り出す。