第33章 恋情増幅(R18)
***
怒涛の午前中を乗り切り、昼休みも徹底して逃げ回ることに成功したユカリは、5限目の授業が始まったことでようやく一息ついていた。
(あと少し……放課後まで逃げ切れば、個性の効果は切れる……!)
教室の自席でそう自分を励ましていた矢先、事態は最悪の方向へと急展開する。
教壇に立つ担任の教師が、ふと思い出したようにユカリを振り返ったのだ。
「あ、ユカリ。悪いが、この資料を今すぐ職員室に届けてくれ」
その言葉に、クラスの空気が一瞬だけピリついた。
事情を知っているミリオとねじれ、環の3人が、弾かれたようにユカリを見る。
「先生! それ僕が持って行きますよ!」
すかさずミリオが快活に手を挙げた。
ねじれも「そうそう! ユカリは今、ちょっと手が離せないっていうか、ね!」と身を乗り出してフォローを入れる。
環もおずおずと手を挙げる。
「……俺も行けます。資料、代わりに届けます……」
声は小さく、挙げる手の位置も低かったが、ユカリを心配する幼馴染ならではの強い必死さが滲み出ていた。
だが、担任は不思議そうに首を傾げる。
「いや、通形。お前はさっき指した問題の解答を黒板に書く番だろう。波動や天喰も戦闘訓練のレポートが未提出だぞ。今は授業中だ、ユカリ、頼めるか?」
「あ、はい! 大丈夫です、行ってきます!」
これ以上怪しまれるわけにはいかない。断る正当な理由もなく、ユカリは心配そうに視線を送ってくる3人に「大丈夫」と目で合図を送ると、資料を抱えて立ち上がった。
教室の扉を開け、細心の注意を払いながら静まり返った廊下へと足を踏み出す。
まさかこの選択が、さらなる波乱を呼ぶとも知らずに―――