第33章 恋情増幅(R18)
出久は二人の顔を見比べながら、静かに結論を口にする。
「だから……」
「ユカリ先輩が今日、二人を避けてたのは、嫌いになったからじゃない」
一拍置いて、はっきりと言った。
「その逆だよ」
爆豪も轟も、完全に言葉を失ったまま出久の言葉を聞いていた。
「近づいたら、二人への『好き』って気持ちが抑えきれなくなる。自分がどうにかなってしまう」
「だから、理性を保つために必死で逃げてたんだと思う」
出久の声が中庭の空間に溶けて消えた瞬間。
そこに、時間が完全に静止したかのような、圧倒的な静寂がなだれ込んできた。
「………は?」
さっきまで険しかった爆豪の表情が、その一言で完全に止まってしまった。
隣では轟も、口元まで運びかけていたいちごミルクのパックを持ったまま動きを止めている。
二人とも、まるで頭の中で何かが繋がっていく音を聞いたようだった。
出久のロジックは完璧だった。
昨夜の電話。
『……爆豪くんに会いたい……』
あの熱に浮かされたような、小さく震える声。
そして今朝。
顔を真っ赤にし、泣きそうな表情で、自分たちから逃げるように走り去っていったユカリ。
あの時は理解できなかった。
けれど今、出久の話を聞いたことで、すべてが一本の線になって繋がっていく。
会いたいと言っていた理由。
近づけなかった理由。
逃げた理由。
そのすべてが、一つの答えへと結びつく。
すべての理由が。
ようやく二人の腑に落ちた。