第33章 恋情増幅(R18)
「あ……!」
突然、出久が何かに気づいたようにぽんと手を叩き、声を上げた。
何かに取り憑かれたような真剣な目になり、「なるほど、そういうことか……!」と激しく一人で頷いている。
足元に置いていたリュックのジッパーを勢いよく開けると、一冊のヒーロー分析ノートを引っ張り出した。
パラパラとページをめくり、びっしりと書き込まれた文字を目で追っていく。
やがて、あるページで手が止まった。
「二人とも、これを見て!」
出久はノートを広げ、爆豪と轟のほうへと向けた。
「昨日のスーパーでの事件、僕、速報や現場にいた人たちの証言をまとめてメモしてたんだ」
出久はページの一か所を人差し指で示した。
「捕まったヴィランの個性は、『感情の一部を一時的に数倍まで増幅させる』精神干渉系の個性だったんだけど……」
そこで一度言葉を切り、ごくりと息を呑んだ。
「実は、まだあまり公表されてない情報があるんだ」
ただならぬ雰囲気を察し、爆豪も轟も、一切の言葉を挟まずに真剣な表情で続きを待っている。
出久は二人の顔を見据え、少し身を乗り出した。
「この個性の正式名称は――『恋情増幅』」
「恋情増幅……?」
轟がその言葉の響きを確かめるように、小さく復唱する。
「そう!」
出久は確信に満ちた表情で、一気に説明をまくしたてた。
「この個性を受けると、本人が一番意識している相手に対する恋愛感情が、二十四時間だけ何倍、何十倍にも膨れ上がるんだ!」
興奮のあまりノートを指でトントンと叩きながら、出久はさらに核心へと踏み込む。
「しかも厄介なことに、その意識している相手に近づけば近づくほど、心拍数が跳ね上がって理性でのコントロールが利かなくなる。好きっていう気持ちにブレーキが利かなくなっちゃうらしい」
穏やかだった中庭の風が、心なしかピタリと止まったような気がした。