第33章 恋情増幅(R18)
その様子を見た爆豪は、眉間の皺を深くした。
傷つけるつもりは毛頭ないが、あからさまに怯えて自分を拒絶するその態度に、ショックと苛立ちが混ざったような顔になる。
「違わねぇだろ。待て、顔見せろ」
苛立ちを滲ませながら、爆豪がさらに踏み出す。
もう、手を伸ばせば触れ合えるほどの距離。
ユカリの理性は完全に決壊寸前だった。
彼の胸に飛び込んで「大好きなの」と叫んでしまいたい衝動が、脳内を真っ白に染めていく。
――その、一触即発の瞬間だった。
どこからともなく上空からフワリと、ねじれが二人の間に舞い降りた。
「はーい爆豪くんストップ!ユカリは今から先生に大事な用事があるの! 通行止めでーす!」
「あ?そこどけ」
爆豪は声を荒らげこそしなかったが、その視線は鋭くねじれを射抜く。
だが、彼がほんの一瞬、ねじれの介入に気を取られたその隙を、もう一人の人物が見逃さなかった。
物陰から素早く現れた環が、ユカリの腕を優しく、けれど確実に引いた。
「……ユカリ、今だ。走って」
「………!」
ハッと我に返ったユカリは、環に導かれるまま、もつれる足を必死に動かしてその場を飛び出した。
予備校舎へと続く薄暗い廊下へ逃げ込んでいく二人の背中を、爆豪はただ、苦々しい目で見送るしかなかった。
「チッ……!」
忌々しげに舌打ちをして、爆豪は壁を拳で軽く叩く。
昨夜、スマホに残された『会いたい』という小さくて愛おしい声を何度も思い出しては、柄にもなくそわそわしていた。
それなのに。
完全に逃げ道を塞いで捕まえたはずの彼女は、見たこともないほど必死な顔で自分から逃げ回っている。
「……意味わかんねぇ。何隠してんだよ……」
いつでも通知に気づけるよう、ずっと制服のポケットで握りしめていたスマホの冷たさが、爆豪の胸の焦りをさらに煽っていた。