第33章 恋情増幅(R18)
「お疲れ様みんな! 元気があっていいねぇ! ちょっと筋肉の調子を見せてくれないかい!?」
「うおっ、通形先輩!?相変わらずゴツいっすね!」
切島たちがミリオに気を取られ、爆豪が「あ? 邪魔だどけ」と毒づいている隙に、影に潜んでいた環がユカリの腕をそっと引いた。
「……ユカリ、こっち。上の階の予備階段に迂回する」
「環……!」
環の誘導により、爆豪たちの視界に入る前にギリギリで別のルートへと逃げ延びることに成功した。背後から「おい、今……」という爆豪の鋭い声が聞こえた気がしたが、振り返る余裕など微塵もなかった。
危機はまだまだ続く。
3限目の10分休憩。ユカリが次の移動教室へ向かおうと、中庭の連絡通路を早歩きで渡っていた時のことだ。
「――ユカリ先輩」
不意に横のベンチから声をかけられた。
端正な横顔に、静謐な瞳。
轟だった。
彼は自販機の前でユカリをじっと見つめていた。
「……さっき廊下で避けてましたよね。何かあったんですか?」
その低い美声が鼓膜に届いた瞬間。
ユカリの胸の奥がきゅんと甘く疼き、身体が吸い寄せられそうになる。
「ユカリ先輩……?」
「ッ……」
(だ、だめだめ、だめ……!)
「ごめんね轟くん!ちょっとトイレ探してるの……!!」
ユカリは涙目でそう叫んで、轟が言葉を発する前に踵を返し、全速力で逃げ出した。
「トイレ……? 先輩そっちは男子トイレ――」
遠ざかる轟の困惑した声を背中に聞きながら、ユカリはそのまま予備校舎へと猛ダッシュしたのだった。
一方、残された轟は、赤と白の髪を少し揺らしながら、ユカリが走り去った方向をじっと見つめていた。
いつもなら話しかければ、必ず笑顔で足を止めてくれるユカリ。
そのはずなのだ。
それなのに。
今日は明らかに様子がおかしい。
(……確実に避けられてるな。俺、何か怒らせるようなことしたか……?)
心当たりを探るように、轟は眉の間にわずかな皺を刻んでいた。