第33章 恋情増幅(R18)
心操は周囲に誰もいないことを確認する。
そして淡々と、しかし確実に真実を引き出すための質問を重ねていく。
「そこで何かあったんですか?」
「……うん。恋情増幅、っていう個性を掠り傷程度に受けちゃって」
「効果は?」
「気になる相手への好意が強制的に……爆発する。解除まで24時間。近づきすぎると、理性がきかなくなるらしくて……」
「なるほど。だからそんなに怯えて歩いてたと。……で、誰に近づきたくないんですか」
ユカリは操られるまま本音を漏らす。
「……爆豪くんと轟くん。昨日、爆豪くんの声を聞いただけで、会いに行こうとしちゃって……二人とも絶対に近づいてくるから、だから……朝早くに逃げてきたの……」
すべてを吐き出させ、事の全貌を把握した心操は、そこでフッと意識の糸を引いた。
「――解除」
パチンと頭の中で音がして、白い霧が一気に晴れる。
次の瞬間。
ユカリは自分が「何を口にしていたか」を完璧に理解して絶句した。
自分の意思とは関係なく、一番隠しておきたかった恥ずかしい秘密を、一から十まで全部自分の声で喋ってしまっていたのだ。
「……っ、今、個性使ったでしょ!?」
ユカリの顔が、みるみるうちに耳まで真っ赤に染まっていく。
両手で顔を覆い、恥ずかしさと怒りで潤んだ瞳を心操にむけるユカリ。
必死に真っ赤になって怒っているその姿は、いつも凛とした先輩としての彼女からは想像もつかないほど、無防備で。
「すみません。でも、手っ取り早かったんで」
「もう……!」
心操はいつも通り気だるげに、視線をふいと斜め前に逸らした。
冷淡を装ったその横顔。
だが、彼の心臓もまた、僅かに跳ね上がっていた。
真っ赤になって怒るユカリの姿が、不覚にも、可愛いだなんて思ってしまった自分を隠すように、心操は少しだけ歩幅を早めて歩き出した。