第33章 恋情増幅(R18)
――一瞬。
リビングの空気が、ピキリと完全に凍りついた。
環の目が察したようにスッと細くなる。
ねじれが「ん?」と不思議そうに首を傾げる。
ミリオは一番早く状況――つまり「1年生の寮=爆豪と轟がいる場所」という事実に気づき、あちゃ、と口元を押さえた。
三人が同時に視線を交わす。
言葉はなくとも、『あ、これ(個性のせいで)やばいやつだ』という共通認識がリビングに走った。
その空気を察した瞬間。
ユカリの顔が一気に火を噴いたように赤くなる。
「ちがっ……違くて! そういう意味じゃなくて!」
だがもう遅い。
言えば言うほど怪しく、墓穴を掘るだけだ。
電話で声を聞いただけで、ここまで行動がバグってしまう。
ヒーローが言っていた「制御困難領域」の入り口に、今まさに片足を突っ込んでいるのを自覚して、ユカリは半泣きで両手を上げた。
ほぼ懇願だった。
「と、とにかく止めて……!!お願いだから、今の私を全力で止めて……!!」
一瞬の静寂。
そして。
「ラジャー!!」
ミリオがめちゃくちゃに頼もしい、いい笑顔でガタッと立ち上がった。
「私たちに任せてユカリ! ひとまず落ち着こう!!」
ねじれも珍しく、真面目な顔つきで深く頷く。
環は重いため息をひとつ吐いて、パタンと静かに本を閉じた。
「……理由は、あえて聞かない方がいいやつだね、これは」
「お願いだから聞かないで……!!」
ユカリは顔を真っ赤に染めたまま、その場で固まるしかなかった。
ポケットの奥へと押し込んだスマホは、まるでユカリの体温が移ったかのように、しばらく熱を持ったままだった。